債券の利回り計算とリスク|4つの利回りを1つの型で解く
債券の利回り計算は、FP3級の「金融資産運用」で毎回のように出る計算論点です。「直接利回り」「応募者利回り」「最終利回り」「所有期間利回り」と4つも名前が出てくるので身構えがちですが、実は4つとも同じ形の式で、違うのは差益をどこからどこまでで測るかだけです。この記事では、その共通の型を示したうえで、計算例・金利との関係・リスクの区別まで整理します。
1. 4つの利回りは同じ型でできている
いずれの利回りも、次の形に当てはまります。
- 利回り(%)= { 表面利率 +(終わりの価格 - 始まりの価格)÷ 保有年数 } ÷ 始まりの価格 × 100
分子は1年あたりの収益(毎年の利息+差益を年数で割ったもの)、分母は投資した金額です。何を「始まり」「終わり」に置くかで名前が変わります。
| 利回りの種類 | 始まりの価格 | 終わりの価格 |
|---|---|---|
| 直接利回り | 購入価格 | —(差益を考えない) |
| 応募者利回り | 発行価格 | 額面(償還まで保有) |
| 最終利回り | 購入価格(既発債) | 額面(償還まで保有) |
| 所有期間利回り | 購入価格 | 売却価格(途中で売却) |
直接利回りだけが差益を含みません。「表面利率 ÷ 購入価格 × 100」で、毎年の利息が投資額の何%にあたるかを見るだけの指標です。他の3つは差益を年数で割って分子に足します。
2. 最終利回りの計算例
もっともよく出るのが最終利回りです。式に当てはめてみます。
例:表面利率1.0%・残存期間2年の固定利付債券を、額面100円あたり98円で購入した場合(税金等は考慮しない)
- 1年あたりの差益 =(100円 - 98円)÷ 2年 = 1円
- 1年あたりの収益 = 表面利率1.0円 + 差益1円 = 2円
- 最終利回り = 2 ÷ 98 × 100 ≒ 2.04%
よくある2つの誤り
選択肢は、計算のどこかを飛ばした値で構成されています。
- 1.02%… 表面利率1.0を購入価格98で割っただけ。償還差益を分子に入れ忘れた形(直接利回りに近い値)
- 3.06%… 償還差益2円を残存年数で割らずにそのまま足してしまった形
つまり出題の狙いは、「差益を入れたか」と「差益を年数で割ったか」の2点です。式を書くときは必ずこの2つを確認してください。
3. 金利と債券価格は逆に動く
計算と並んで頻出なのが、金利と価格の関係です。
市場金利が上昇すると、すでに発行されている固定利付債券の価格は下落します。金利が上がると新しく発行される債券のほうが条件が良くなるため、相対的に魅力が下がった既発債は価格が下がり、その結果として利回りが市場水準に近づく——という理屈です。「金利上昇 → 債券価格下落」は逆向きに覚えていると必ず失点するので、セットで固定してください。
価格の動きやすさは何で決まるか
同じ金利変動でも、価格の振れ幅は債券によって違います。
- 残存期間が長い債券ほど、価格の変動幅は大きい
- 表面利率が低い債券ほど、価格の変動幅は大きい
この性質を1つの指標にまとめたのがデュレーションです。デュレーションは投資資金の平均回収期間を表し、残存期間が長いほど、また表面利率が低いほど長くなり、金利変動の影響を受けやすくなります。上の2つの性質とまったく同じ向きなので、あわせて覚えると効率的です。
4. 債券の3つのリスク
リスクの名称を選ばせる問題も出ます。それぞれ「何が原因か」で区別します。
| リスク | 内容 |
|---|---|
| 信用リスク(デフォルトリスク) | 発行体の財務悪化などで、利子や償還金の支払いが滞る・支払われない |
| 価格変動リスク(金利リスク) | 市場金利の変動により債券価格が変動する |
| 流動性リスク | 取引が少なく、売りたいときに適正な価格で売却できない |
信用リスクは格付で判断します。BBB(トリプルB)格以上が投資適格債、BB格以下は投機的格付(ハイ・イールド債、ジャンク債)です。格付が高いほど信用リスクは低く、利回りは低くなるという関係も押さえておきましょう。逆に信用リスクが高い債券は、価格が低く利回りは高くなります。
5. 覚えておきたい2つの債券
- 割引債(ゼロクーポン債)… 利子の支払いがない代わりに額面より低い価格で発行され、償還時に額面で償還されます。その差額(償還差益)が実質的な利息にあたります
- サムライ債(円建て外債)… 外国の政府や法人が日本国内で円建てで発行する債券です。購入・利払い・償還がすべて円なので為替リスクはありません(発行体の信用リスクはあります)。外貨建てで発行されるショーグン債と区別してください
6. 解くときの手順
- ① どの利回りかを確認する — 差益を考えないなら直接利回り、償還まで持つなら応募者/最終、途中で売るなら所有期間
- ② 「始まりの価格」を決める(発行価格か購入価格か)。これが分母になる
- ③ 差益 = 終わりの価格 - 始まりの価格 を出し、保有年数で割る
- ④ 表面利率に③を足して分子にし、②で割って100を掛ける
- ⑤ 計算以外が問われていたら → 金利上昇は価格下落、残存期間が長い・表面利率が低いほど変動大、BBB以上が投資適格
理解度チェック(4問)
ここまでの内容が身についたか、その場で確認できます。選択肢を選ぶと正解と解説が出ます。
Q1. 市場金利が上昇すると、既に発行されている固定利付債券の価格は、一般に上昇する。
答えと解説
正解:×
市場金利と債券価格は逆の動きをします。金利が上昇すると、相対的に魅力が下がった既発債は価格が下落し、利回りが市場水準に近づきます。「金利上昇→債券価格下落」はFP試験の頻出ポイントです。
Q2. 債券の発行体の財務状況の悪化などにより、利子や償還金の支払いが滞る、または支払われないリスクは、次のうちどれか。
答えと解説
正解:1. 信用リスク
信用リスク(デフォルトリスク)は発行体の債務不履行のリスクで、格付けにより判断されます。信用リスクが高い債券ほど価格は低く、利回りは高くなります。
Q3. BBB(トリプルB)格相当以上の格付が付された債券は、一般に投資適格債とされる。
答えと解説
正解:○
BBB格以上が投資適格債、BB格以下は投機的格付(ハイ・イールド債、ジャンク債)とされます。格付が高いほど信用リスクが低く、利回りは低くなる関係にあります。
Q4. 下記<資料>の債券を購入し、償還まで保有した場合の最終利回り(年率・単利)として、最も近いものはどれか。なお、税金や手数料は考慮しない。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 表面利率 | 1.5% |
| 残存期間 | 4年 |
| 購入価格 | 額面100円あたり97円 |
| 償還価格 | 額面100円 |
答えと解説
正解:3. 2.32%
最終利回りは「{表面利率+(額面-購入価格)÷残存年数}÷購入価格×100」で求めます。額面より安く買うと償還時に差益が出るため、利回りは表面利率を上回ります。
- (額面100円 - 購入価格97円) ÷ 4年 = 0.75円
- (1.5 + 0.75) ÷ 97 × 100 ≒ 2.32%
まとめ
債券の利回りは4種類ありますが、{ 表面利率 + 差益 ÷ 年数 } ÷ 始まりの価格 × 100 という1つの型で全部解けます。名前を覚えるより、どこからどこまでの差益を、何年で割るかを読み取ることが得点につながります。あわせて金利上昇=価格下落、残存期間が長いほど・表面利率が低いほど価格が動きやすい、BBB格以上が投資適格の3点を押さえれば、この分野は安定します。Fノピの無料演習には債券の利回り計算とリスクの問題を複数収録しているので、実際に式を書いて解いてみてください。
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本記事は他の解説記事と同じく2026年4月1日法令基準日時点の情報に基づいて記述しています。本文中の表面利率・購入価格などの数値は算式を説明するための仮の例であり、特定の銘柄や実際の市場の数値を示すものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。