FP3級 相続・事業承継の頻出論点まとめ・攻略ガイド
「相続・事業承継」は、誰がどれだけ財産を相続するかという民法のルールと、相続税・贈与税という税金のルールを組み合わせて理解する分野です。法定相続人・法定相続分の計算は最頻出テーマで、家族関係を図に描いて考える練習をしておくと得点源になります。学科試験60問のうち他分野と同程度の出題が見込まれ、ライフプランニング分野の遺族年金やタックスプランニング分野の所得税とも関連する内容が多い分野です。
1. 相続人の範囲と順位
民法上、被相続人(亡くなった方)の配偶者は常に相続人になります。配偶者以外の相続人には順位があり、第1順位が子(子が亡くなっている場合はその子である孫が代襲相続)、第2順位が直系尊属(父母、父母がいなければ祖父母)、第3順位が兄弟姉妹(兄弟姉妹が亡くなっている場合はその子である甥・姪が代襲相続)と定められています。先の順位の相続人が1人でもいれば、後の順位の人は相続人にはなれない点が基本ルールです。
2. 法定相続分の計算
民法で定められた相続分の目安を法定相続分といいます。配偶者と子が相続人の場合は配偶者2分の1・子2分の1(子が複数いる場合は均等に分ける)、配偶者と直系尊属の場合は配偶者3分の2・直系尊属3分の1、配偶者と兄弟姉妹の場合は配偶者4分の3・兄弟姉妹4分の1という組み合わせを正確に覚えることが最重要です。相続人が配偶者のみ、子のみなど単独の場合はその相続人がすべてを相続します。法定相続分は遺産分割協議がまとまらない場合の目安であり、相続人全員の合意があれば、この割合と異なる分け方をすることも可能です。
3. 相続の承認と放棄・遺産分割
相続人は、被相続人の財産(プラスの財産)だけでなく債務(マイナスの財産)も承継します。相続人は、プラス・マイナスすべてを引き継ぐ単純承認、相続財産の範囲内でのみ債務を引き継ぐ限定承認、相続そのものを放棄する相続放棄のいずれかを選択でき、限定承認・相続放棄は、自己のために相続が開始したことを知った時から原則3か月以内(熟慮期間)に家庭裁判所に申述する必要があります。実際の遺産の分け方を決める遺産分割には、遺言による指定分割、相続人全員の話し合いによる協議分割、まとまらない場合の調停分割・審判分割があります。
4. 遺言と遺留分
遺言には主に、遺言者が全文・日付・氏名を自書し押印する自筆証書遺言、公証人が作成し証人2人以上の立会いのもとで作成する公正証書遺言、内容を秘密にしたまま存在のみを公証人に証明してもらう秘密証書遺言の3種類があります。自筆証書遺言は法務局による保管制度を利用できる点や、公正証書遺言は家庭裁判所の検認が不要である点など、方式ごとの特徴が頻出です。また兄弟姉妹以外の法定相続人には、遺言によっても奪うことのできない最低限の相続の権利である遺留分が認められており、遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害額請求権を行使することで金銭による支払いを請求できます。
5. 相続税の仕組みと基礎控除
相続税は、相続や遺贈によって取得した財産の額から債務・葬式費用などを差し引いた課税価格の合計額をもとに計算されます。相続税には「遺産に係る基礎控除額」があり、その計算式は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。この基礎控除額を超える部分に対してのみ相続税が課される仕組みのため、法定相続人の数が多いほど基礎控除額は大きくなります。相続税の申告と納付は、相続の開始があったことを知った日の翌日から原則10か月以内に行う必要があり、一括での納付が困難な場合には、分割して納付する延納や、金銭以外の財産で納付する物納という制度も設けられています。
6. 財産の評価方法
相続税・贈与税を計算するうえで、財産の価額をどう評価するかも重要な論点です。宅地の評価方法には、路線価が定められている地域で用いる路線価方式と、路線価が定められていない地域で固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて評価する倍率方式があります。被相続人が事業や居住のために使っていた宅地について、一定の要件のもとで評価額を減額できる小規模宅地等の特例も代表的な制度です。上場していない会社の株式(取引相場のない株式)の評価には、会社の規模等に応じていくつかの評価方式が使い分けられます。
7. 贈与税の仕組み
個人から財産をもらったときにかかる税金が贈与税です。贈与税の課税方式には、1年間(1月1日から12月31日まで)に受けた贈与の合計額に対して課税する暦年課税と、一定の要件のもとで選択できる相続時精算課税制度の2種類があります。暦年課税では、年間110万円の基礎控除があり、贈与財産の合計額がこの金額以下であれば贈与税はかかりません。相続時精算課税制度は、贈与時に贈与税を軽減または非課税とする代わりに、贈与者が亡くなった際にその贈与財産を相続財産に加算して相続税を計算するという、贈与税と相続税を一体的に扱う仕組みである点が特徴です。一度相続時精算課税制度を選択すると、同じ贈与者からの贈与について暦年課税に戻すことができない点も重要な注意点です。
8. 事業承継対策の基礎
中小企業の経営者が後継者に事業を引き継ぐ事業承継では、自社の株式(自社株)の評価額が高くなりやすく、後継者が相続税・贈与税の負担なく株式を引き継げるかが課題になります。そのため、一定の要件を満たす後継者が自社株を承継する際に相続税・贈与税の納税を猶予・免除する事業承継税制などの制度が設けられています。3級の学習段階では、こうした制度が「後継者の税負担を軽減するために存在する」という趣旨を理解しておけば十分です。
理解度チェック(4問)
ここまでの内容が身についたか、その場で確認できます。選択肢を選ぶと正解と解説が出ます。
Q1. 相続人が被相続人の配偶者と子2人の合計3人である場合、配偶者の法定相続分は2分の1、子の法定相続分はそれぞれ4分の1である。
答えと解説
正解:○
配偶者と子が相続人の場合、法定相続分は配偶者2分の1・子全体で2分の1です。子が2人いる場合は2分の1を均等に分け、各4分の1となります。
Q2. 相続税の基礎控除額は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の算式により計算される。
答えと解説
正解:○
課税価格の合計額がこの基礎控除額以下であれば、相続税はかからず申告も原則不要です。法定相続人の数には相続放棄をした者も含め、養子は実子がいる場合1人まで、いない場合2人まで算入できます。
Q3. 相続時精算課税制度を選択した受贈者は、特別控除額2,500万円とは別に、年110万円の基礎控除の適用を受けることができる。
答えと解説
正解:○
2024年1月以後の贈与から、相続時精算課税にも年110万円の基礎控除が創設されました。基礎控除以下の贈与は申告不要で、相続時の加算対象にもなりません。特別控除2,500万円を超えた部分には一律20%の贈与税が課されます。
Q4. Kさん(被相続人)の<親族関係図>が下記のとおりである場合、民法上の法定相続分の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。
答えと解説
正解:1. 妻 1/2・長男 1/4・孫A 1/8・孫B 1/8
配偶者と子が相続人の場合、法定相続分は配偶者1/2・子全体で1/2です。子は長男と二男の2人なので各1/4ですが、二男が相続開始以前に死亡しているためその1/4を孫A・孫Bが均等に承継し、1人あたり1/8になります。
- 配偶者と子 → 妻 1/2、子全体で 1/2
- 子は長男と二男の2人 → 各 1/4
- 二男は死亡 → その1/4を孫2人で均等に承継
- 1/4 × 1/2 = 孫1人あたり 1/8
間違えやすいポイント・覚え方
相続・事業承継で最も間違えやすいのは法定相続分の組み合わせです。「配偶者と子=1/2・1/2」「配偶者と直系尊属=2/3・1/3」「配偶者と兄弟姉妹=3/4・1/4」というように、配偶者の取り分が子→直系尊属→兄弟姉妹の順で大きくなっていく(数字が2分の1→3分の2→4分の3と増えていく)流れで覚えると整理しやすくなります。また相続放棄をした人ははじめから相続人でなかったものとして扱われるため代襲相続が発生しない一方、相続欠格・廃除の場合は代襲相続が発生するという違いも狙われやすいポイントです。基礎控除の計算式「3,000万円+600万円×法定相続人の数」は、法定相続人の数を求める際に相続放棄をした人も数に含める点も忘れずに確認しましょう。
学習のコツとまとめ
相続・事業承継は、家族関係図を自分の手で書いて法定相続人と法定相続分を判断する練習を繰り返すことが最も効果的な学習法です。誰が相続人になるかのパターンをいくつも解いているうちに自然と判断スピードが上がります。そのうえで、相続税の基礎控除の計算、財産評価の仕組み、贈与税の暦年課税・相続時精算課税制度という流れで理解を広げていくと、ライフプランニング分野やタックスプランニング分野との関連(遺族年金、所得税の非課税財産など)も見えてきて、学科試験全体の理解が深まります。
この分野の詳しい解説
相続・事業承継のなかでも特に問われやすい論点は、テーマ別の記事で個別に掘り下げています。
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