退職所得の計算|退職所得控除と2分の1課税
退職所得は、FP3級の「タックスプランニング」で頻出の計算論点です。長年の勤務に対する対価であることから、控除を引いたうえでさらに2分の1にするという手厚い優遇が用意されており、その仕組みがそのまま出題されます。この記事では、計算式・控除額の求め方・優遇が使えない例外・手続きによる違いを、順に整理します。
1. 計算式と課税方法
退職所得の金額は、次の式で求めます。
- 退職所得の金額 =(収入金額 - 退職所得控除額)× 2分の1
ポイントは2つあります。控除を引いた後にさらに2分の1を乗じることと、退職所得は分離課税である——つまり他の所得と合算せずに税額を計算する——ことです。
分離課税になる所得としては、退職所得と山林所得をセットで覚えておくと整理できます。山林所得(保有期間5年超の山林の伐採・譲渡による所得)も分離課税で、こちらは税負担を緩和する5分5乗方式で税額を計算します。
2. 退職所得控除額は勤続20年が分かれ目
控除額は勤続年数によって算式が変わります。20年を境に1年あたりの単価が上がるのが特徴です。
| 勤続年数 | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円 × 勤続年数(最低80万円) |
| 20年超 | 800万円 + 70万円 ×(勤続年数 - 20年) |
20年超の式にある800万円は、40万円 × 20年の部分をあらかじめ計算したものです。「20年までは40万円ずつ、それを超えた分は70万円ずつ積み上がる」と理解しておけば、式を丸暗記しなくても復元できます。
選択肢には「30万円」「70万円」が並びます。70万円は20年を超える部分の単価であって、20年以下の部分は40万円です。取り違えを狙った出題なので注意してください。
勤続年数の端数は切り上げる
勤続年数に1年未満の端数があるときは、切り上げて1年として数えます。たとえば勤続20年3か月なら21年です。切り捨てではない点に注意してください。
計算例
- 勤続10年・退職金600万円
控除額 = 40万円 × 10年 = 400万円
退職所得 =(600万円 - 400万円)× 1/2 = 100万円 - 勤続30年・退職金2,500万円
控除額 = 800万円 + 70万円 ×(30年 - 20年)= 1,500万円
退職所得 =(2,500万円 - 1,500万円)× 1/2 = 500万円
控除額が収入金額を上回る場合、退職所得はゼロとなり所得税はかかりません。
3. 2分の1が使えない例外
2分の1を乗じる優遇には例外があります。勤続年数5年以下の役員等が受け取る役員退職金には、2分の1課税の適用がありません。短期間で役員に就任して退職金を受け取る形での税負担の圧縮を防ぐための取扱いです。
「退職所得は必ず2分の1になる」と覚えていると引っかかります。原則は2分の1、ただし勤続5年以下の役員等は例外と押さえてください。
4.「退職所得の受給に関する申告書」を出したかどうか
手続きの有無で源泉徴収のされ方が大きく変わります。ここも頻出です。
| 申告書 | 源泉徴収 | 確定申告 |
|---|---|---|
| 提出した | 退職所得控除を適用した適正な税額 | 原則不要 |
| 提出しなかった | 収入金額全体に20.42% | 申告により精算(還付)できる |
提出しなかった場合は退職所得控除が適用されず、収入金額そのものに一律の税率がかかります。ただし救済はあり、確定申告をすれば精算して還付を受けられます。「申告書を出さないと取り戻せない」わけではない点も押さえておきましょう。
税率の数字も紛らわしいので区別してください。
- 20.42%… 申告書を提出しなかった場合の退職金の源泉徴収
- 20.315%… 上場株式等の譲渡益・配当や預貯金の利子など
- 10.21%… 原稿料や講演料など(100万円以下の部分)
5. 受け取り方で所得区分が変わる(iDeCo・確定拠出年金)
確定拠出年金の個人型年金(iDeCo)の老齢給付金は、受け取り方によって所得の種類が変わります。
- 一時金として一括で受け取る → 退職所得。このとき掛金の拠出期間を勤続年数とみなして退職所得控除を計算します
- 年金形式で分割して受け取る → 雑所得(公的年金等)
同じ給付でも受取方法で税務上の扱いが変わる、という対比がそのまま設問になります。
6. 解くときの手順
- ① 勤続年数を確定する。1年未満の端数は切り上げ
- ② 20年以下か20年超かで控除額の算式を選ぶ(40万円×年数 / 800万円+70万円×超過年数)
- ③ 収入金額から控除額を引く
- ④ 2分の1を乗じる(勤続5年以下の役員等は乗じない)
- ⑤ 手続きが問われていたら → 申告書の提出なしは20.42%、確定申告で精算可
理解度チェック(3問)
ここまでの内容が身についたか、その場で確認できます。選択肢を選ぶと正解と解説が出ます。
Q1. 退職所得の金額は、原則として、(収入金額-退職所得控除額)×2分の1により計算される。
答えと解説
正解:○
退職所得は長年の勤務の対価であることから、退職所得控除後にさらに2分の1を乗じる優遇された計算となっています(勤続5年以下の役員等の役員退職金には2分の1課税の適用がないなどの例外があります)。また退職所得は分離課税です。
Q2. 退職所得控除額の計算において、勤続年数20年以下の部分に適用される1年あたりの控除額は、次のうちどれか。
答えと解説
正解:1. 40万円
退職所得控除額は、勤続20年以下の部分は40万円×勤続年数(最低80万円)、20年超の部分は70万円×(勤続年数-20年)+800万円で計算します。勤続年数の1年未満の端数は切り上げます。
Q3. 退職金の支払いを受ける際に「退職所得の受給に関する申告書」を提出しなかった場合、退職金の収入金額に対して何%の税率で所得税および復興特別所得税が源泉徴収されるか。
答えと解説
正解:3. 20.42%
申告書を提出しないと、退職所得控除が適用されず収入金額全体に20.42%の源泉徴収が行われます。この場合でも確定申告により精算(還付)が可能です。提出していれば適正な税額で源泉徴収され申告不要です。
まとめ
退職所得は「控除を引いて、半分にする」という一本の流れさえ押さえれば計算できます。差がつくのは、勤続20年を境に単価が40万円から70万円に変わること、端数は切り上げること、勤続5年以下の役員等には2分の1がないこと、そして申告書を出さないと20.42%で源泉徴収されることの4点です。あわせてiDeCoは一時金なら退職所得・年金形式なら雑所得を押さえておけば万全です。Fノピの無料演習には退職所得の計算問題を複数収録しているので、実際に勤続年数から控除額を出す練習をしてみてください。
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本記事は他の解説記事と同じく2026年4月1日法令基準日時点の情報に基づいて記述しています。記載した控除額の単価・税率は本記事作成時点の法令によるものです。本文中の退職金の金額は算式を説明するための仮の例です。最新の法令・制度は公式情報をご確認ください。